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EXHIBITION
展覧会記録
2018年7月23日-8月4日
ギャルリ―東京ユマニテ
向山裕展「捕食者・水たまり」
Galerie Tokyo Humanite
MUKOYAMA Yutaka "Predator – Puddle"
厚い落葉を踏みしめるたび、腐植土の甘い醗酵臭が染み出してくる。樹々の隙間から白く光る水たまりのようなものが見えた。暗く湿った雑木林の中、そこに向かって歩き出す。程なく正体がわかった。
ひとむらの羽毛が、地面に広がっていた。一所にまとまっているので、遠目に水たまりに見えたようだ。黒い地面の上、真っ白な羽毛が異様な対比をなし、木立を抜けていく気流に、かすかにそよいでいる。一羽の鳥が、ここで食べられたのだろう。
うずくまり、淡雪のようなそれをひと掴みたなごころに乗せる。すばらしい清らかさ。いったい鳥は生活のなかで、どうして少しも汚すことなく、このような純白を保てるのだろうか。大きめの風切羽もつまみあげてみる。こちらは羽軸に沿って薄墨を流したような柔らかな濃淡があり、白黒とは思われない
深い彩りをたたえている。
この鳥にとっての、つい昨日まで連綿と続いていた日常は、今日ここでふいに終わってしまった。それは捕食者にとって日常の継続でもある。かきわけ探しても、南天の実ほどの血痕も見当たらない。なぜか怖気がふるい冷汗が湧いた瞬間、どっと風が吹きぬけ、羽毛を落葉ごと舞い散らした。
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